透明人間

磯部昭子

2023年 7月 28日 ー 8月 13日

SOM GALLERY

この度 SOM GALLERYは、磯部昭子の個展「透明人間」を、日本橋馬喰横山にて開催いたします。 

磯部は、ポートレートやファッションを中心とした広告写真の分野で活躍を続ける一方で、広告写真におけるクリエイティブの連続に位置する写真作品を制作しています。本作品では、意図された図像(モチーフ)へ視覚的な違和感を施しながらも、色彩や、レイアウトによる独特な演出を取り入れることで画面を成立させています。写真作品を通じて、映し出される「側」を視認する我々の常時性を顕在化させています。

例えば限定のクリア版とか、ガチャガチャのシークレットのクリアだったりとか、何かと特別感を演出するにふさわしい透明について、子供心にあれは魔法のようであった。周りが透けて見えるなんて魔法でしかないだろう。水に沈めると消えて無くなってしまう、でも実体はある。なんて摩訶不思議な物体なんだと私は夢中になっていった。そういうものはどこか信仰にも似ている。私たちが視覚で物事を把握している時、透明なモノは周りにあるモノが透けてこそ透明であることがわかるしその存在を把握できる。私たちの見ている世界は人間の眼差しあってこそその場に存在していることが言えるし、見えていないところに世界は形成されていないと言っても過言ではなく、その時背後にあるのはむしろ気配といった不確かさである。そんな時「透明人間」という言葉が浮かんだ。ちょっとふざけている感じが好きだ。私たちは生まれながらに透明人間で、だれかに見られてこそ存在している。個を知らしめるために着飾ったり印をつけたりするんじゃないかと。個々の見ている世界はきっと絶対交わらないし、同じ世界はないと思う。ちょっとずつ違うし、全然別物かもしれない。本当にこの世は不確かさの塊だから。だから私は人を撮る時も物を撮る時も、よくわからないから信仰の対象物のように撮影してしまうのだ。

2023年7月 磯部昭子 

武蔵野美術大学造形学部映像学科在学中より創作活動を始め、写真作品を多数発表。2000年にフィリップモリス・アートアワード入選、エプソンカラーイメージングコンテスト伊藤俊治審査委員賞を受賞。2001年に第18回写真『ひとつぼ展』入選を果たし注目を集める。大学卒業後、フリーランスとして活動を開始。雑誌やCDジャケット、その他広告を手がけてきた。2010年、第1回アインシュタインフォトコンペティションにて後藤繁雄審査委員賞受賞。主な個展に『LANDMARK』(G/P gallery、東京、2018)、『Dummy』(G/P gallery、東京、2016)、『DINNER』(G/P gallery、東京、2015)、『u r so beautiful.』(GALLERY SPEAK FOR、2013 / ガーディアン・ガーデン、東京、2012)。主なグループ展にKG+2022『Extras in the Fog』、松本市美術館×松本PARCO『パルコde美術館』、『集美xアルル国際写真フェスティバル Tokyo Woman New Real New Fiction』など。主な写真集に『VIDEO LOOP』『ALTER EGO』(私家版)がある。現在は東京を拠点に活動。

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