Root / Shoot
稲垣美侑
2024年 11月 13日
ー
12月 1日
SOM GALLERY
SOM GALLERY は、11月13日(水)から12月1日(日)まで、稲垣美侑による個展、「Root / Shoot」を開催いたします。本展は、稲垣によるSOM GALLERYにて開催される初めての個展となります。
本展では、稲垣の色彩豊かな油絵作品をはじめ、昨年より発表を開始した陶器作品を発表いたします。
稲垣美侑は、東京藝術大学大学院美術研究科美術専攻油画博士号取得後、東京を拠点に作品を制作、発表しています。稲垣は、「世界はどのような姿をしていたか。」という問いのもと、棲家や庭先といった身近な住環境、自然や動植物が育くむささやかな生態を周期的に観察することにより、対象や場所に内包される記憶や諸感覚を拾いあげ、描く行為を通じて、私たちの生きる場所やその先に広がる景色について問い続けています。
稲垣の作品は、彼女自身あるいは異なる生物、他者といった複数の視点を想像し、再解釈する試みから制作が始まります。幾つもの視点が緩やかに交錯する景色は、幾何学的な模様や具象的なイメージを排した細かい筆致と大胆なストロークで構成されるなど、多岐に渡ります。また、時にはキャンバス作品に木板が垂直的に取り付けられた作品やキャンバスの一部が刳り抜かれた変形作品など、異質性を帯びた作品群も存在しています。これは、稲垣にとって、作品及び展示空間を自身の定義する「庭」と捉えている視点に起因します。場所特有の生態系をもつ「庭」においては、日々微細ながらも環境は変化していきます。稲垣はその時間的経過を丁寧に考察し、汲み取った上で、各作品の中に内包させます。
流動的かつ多視点的な作品群は、お互いを補完しあいながら展示空間を創出し、ホワイトキューブを唯一無二の「庭」へと変容させます。鑑賞者は、稲垣が作り上げた「庭」を通じて、記憶や感触、人間が知覚しえない変化等を想像し、私たちが日常で見落とし零れ落ちていく存在や光景に思いを馳せることでしょう。
展示タイトル「Root(ルート)」と「Shoot(シュート)」は植物のからだの構造の総称に由来しており、ルートは根っこ、 シュートは茎と茎に付随する葉からなる単位を意味している。光と土壌養分を主な栄養素として生育する植物は、頂端部で分裂を繰り返すことで未熟な芽が伸張し、次々に新しいシュートや根が継ぎ足されることで、日毎にその単位の数と配置を変化させながら多様な生き方を形成していく。
私にとって描く行為とは、ものの持つ本来の意味や姿を解体し、問い直すための過程であり、まだ見ぬ景色に触れるための手立てとしてある。「庭」は、いくつもの生と死、見えるものも見えないものも一緒くたにして隔てるものなく、存在することができるだろうか。
土に触れる、
この場所はだれのもの
眼のむこう側に広がる庭のずっと先に歩む道の、
さらに遠くの空とその先に飛ぶ鳥の囀りに至るまでたがいにかかわって満ち引きをするように。
ここにはそれぞれに生きる速度があり、見えるものも見えないものも同じ地平で一緒くたに存在しながら、
互いを認めたり、貶したり、分かち合ったり遠ざけたり、異なるいくつものリズムを生成しながら、なにか線をひき点で結ぶには困難なほどに、絡まり合って豊かな営みのかたちを息づかせている。
想像をしてみる、
世界はどのような姿をしているか
絵はこの場所に広がっていて、小さな呼び声とともに画布の向こうで待機している。
2024.11 稲垣 美侑
稲垣美侑は、神奈川県生まれ。2021年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了後、現在は東京を拠点に、作品を制作し、発表しています。
主な個展として、「黑冠與水坑」Pon Ding(台北、2024年)、「渦としかく」CLEAR GALLERY TOKYO(東京、2023年)、「めをあける」KATSUYA SUSUKI GALLERY(東京、2023年)等。
主なグループ展として、「海女がつなぐ13人のART」鳥羽市立海の博物館(三重、2023年)、「亀山トリエンナーレ 2022」市指定文化財 旧舘(三重、2022年)「桃源郷通行許可証」 埼玉県立近代美術館(埼玉、2022年)、「パラランドスケープ “風景”をめぐる想像力の現在」三重県立美術館(三重、2019年)等。
Works
Installation View