Who’s Afraid of Bild-ing

渡辺えつこ

2024年 12月 11日

12月 29日

SOM GALLERY

SOM GALLERY は、12月11日(水)から12月29日(日)まで、渡辺えつこの個展、「Who’s Afraid of Bild-ing」を開催いたします。本展は、昨年6月に開催したグループ展「Interverse」に続く、渡辺にとってSOM GALLERYで開催される2回目の展示です。今回の展示では、渡辺を代表する油彩作品に加え、初めてドローイング作品も展示いたします。

渡辺はこれまで、見慣れた日常の光景の中に潜む異質な場面を巧みに見つけ、それを一つの風景として絵画の世界に置き換えることで、私たちの認識がどのように現実を捉えているのか、現実が認識される過程でどうやってずれていくのかを描き出しながら、一方では絵画そのものの在りようについて問いかけをしてきました。

近年は、本展タイトルでもある「Bild-ing」シリーズの作品を制作しており、渡辺が実際に撮影した建物の画像上に指でデジタル的に縦横に多数のストロークを入れながらリタッチを加えることにより、異質な空間を表出させると同時に、「不完全」へと退行させます。ここから絵の具という物質を扱い、描き起こす過程を通じて、「具象と抽象の中間」的なイメージを現前させ、「絵画の拡張」を試みます。

本展タイトルにもある「Who’s Afraid of」は、バーネット・ニューマン(1905-1970)の晩年の作品である「Who's Afraid of Red, Yellow and Blue」に由来します。力強い色面と極少数の要素だけで構成されるニューマンの作品は、信仰に近い厳格さと荘厳を表す巨大な色面により、究極的なスタンスで絵画とは何かを問い直したと言えます。そのようなニューマンの有り様は、渡辺の若年期のドイツでの体験のひとつでもあります。そこから数々の絵画のあり方の変遷の経験を通し、ここで「Bild-ing」シリーズとして展開されるのは、夜景の窓から具象性のニュアンスと、絵画的空間として切り込む色面の抽象性による画面としてのリアルです。この画面上でのやり取りを通して、ときに冷たく、ときに温かみを帯びた都市の風景のニュアンスを一つの絵画のありようとして鑑賞者に提示します。

 私はよくタイトルに造語を使います。これはいつも降ってくるように湧く直感によるものです。今回も夜景のビルの画像を扱っているので、「ビルディング」と思い浮かべていると、「Bild」という言葉につながり、これにingがつきました。「Bild」はドイツ語で絵や図を意味する言葉、これに英語のing(進行形)がついているわけです。

2024. 12 渡辺 えつこ

渡辺えつこは、1960年東京生まれ。1982年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業後、同年デュッセルドルフ芸術アカデミーに留学。ゲルハルト・リヒターに師事し、85年にマイスターシュラーを取得。以降、2013年までデュッセルドルフを拠点に制作発表をしています。
主な個展として、「News」Yumiko Chiba Associates(東京、2015年)、「picture in picture」​Yumiko Chiba Associates(東京、2014年)、Kunstraum Düsseldorf(デュッセルドルフ、2011年)等。主なグループ展として、「INTERVERSE」SOM GALLERY(東京、2023年)、「Gegenüberstellung / confrontation 対置」Yumiko Chiba Associates viewing room Shinjuku(東京、2021年)「四次元を探しに-ダリから現代へ-」 諸橋近代美術館(福島、2019年)等。

本展への皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

Works

Installation View